通商産業省 関東通商産業局 関産認協第1476号

METSA

組合員探訪

第36回訪問 2025年11月11日(火) ティー・アンド・シー株式会社

組合員探訪
ティー・アンド・シー株式会社
本社住所
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町1-7 神田ミハマビル9F
代表者
代表取締役社長 中村 祥次郎氏
会社設立
1999年11月2日
組合加入日
2018年9月15日
訪問日
2025年11月11日(火)16時~
樽屋監事、小倉事務局長、小池顧問が訪問し、中村代表、岡本氏に話を伺いました。

設立後27年目に入りました。特徴として金融業務システムへの上流工程を含む幅広い対応が可能です。また、プロジェクト管理経験が豊富な技術者が多数所属しております。当社の理念として、「感じ、考え、行動する」を掲げ会社の原点となっています。

会社設立のきっかけやご苦労されたことについて

元ユニシス(現BIPROGY)の会社の先輩たちが 1999年に当社を設立しました。設立当時、私はまだ BIPROGY社の社員で、当社とは深い関わりがありませんでした。当初はユニシスのつながりで案件をいただいていましたが、売り上げはなかなか伸びず、厳しい状況に置かれていることを外から見ていて感じていました。
そのような中、2014年に、それまでお客様側の立場だった私に「当社に経営参加してほしい」という話が持ちかけられました。会社はほとんど“吹けば飛ぶ”ような規模で、正直不安もありましたが、さまざまな思いが重なり、最終的に引き受けることにしました。
当時の当社には、組織として営業部門や総務部門が整っておらず、まずはビジネスをどのように立て直すかというところからスタートしました。私の持つコネクションを活用して案件を獲得するなど、まずは事業基盤の再構築に力を注ぎました。同時に、このままでは会社が持たないという危機感から、総務部門を立ち上げ、社内体制を部課制へ移行するなど、組織化を進めました。
当時は採用活動も行われておらず、このままでは会社の継続が難しいと判断し、定期採用へ舵を切りました。こうした取り組みを経て、ようやく会社の形が整ってきたのが、私が社長に就任した 2018年頃だったと思います。
その頃、当時契約社員として在籍していた岡本さん(現・執行役員)も一緒に行動を共にしていました。銀行からの融資獲得、案件の開拓、ビジネスの拡大、定期採用の開始など、実にさまざまなことに一緒に取り組んできました。

貴社の現在の状況について

現在は、大手企業などと直接契約ができるまでになりました。大手のお客様との取引では ISMS資格取得が前提条件になっていることもあり、今期取得いたしました。
業務内容として、特に金融業務の知見が深く、お客様の要件取りまとめから開発工程での管理も含め、全行程でシステム開発及び開発支援をご提供しています。
また、クラウドを含めたインフラ構築も得意で、特にシステムの全体的な品質や性能、使いやすさ、セキュリティなどを定義するような非機能要件の立案から設計・構築・保守までの一貫したサービスをご提供しています。
社員数50人超えが目前に控え、法的規制への対応、円滑な契約事務処理に向けた組織体制整備にも取り組んでいます。
売上や利益も伸びてきますと、お付き合いのある銀行の方も親身に協力してくれるようになり、資金面やキャッシュフローの問題もなくなりました。

オフィスにカウンターバーがありますが・・

オフィスは秋葉原駅から徒歩約3分の場所にありますが、社員の多くは金融案件を担当しているため、客先のオフィス外での作業ができず、社員間の交流が少ないのが課題でした。そこで、神田本社(事務所)を社員に開放し、いつでも事務所に帰れば飲んだり食べたりできる環境を整えました。困るのは帰社日に(1回/月)、社員の多くがオフィスに戻ってくる日です。社員数が増えてきたこともあり、全員が入りきらなくなり、立ち席のようになってしまうこともあります。
オフィスにはカウンターバー、大型の冷蔵庫、ワインセラー、オーディオ設備もあり、無料で利用できます。オフィスはアドレスフリーな自由空間になっており、飲みたい人はいつでも戻ってきますし、社外の方にも「ぜひ寄ってください」と声をかけています。私自身は、もう自由に飲んでいますが(笑)。
カウンターでは仕事の話もしますが、自然とプライベートな話も出てきます。そんな空間が、社員同士の距離をぐっと縮めてくれているように感じます。
おかげで社員同士はすごく仲が良く、休みの日にはゴルフやキャンプに出かけたり、社員が出ている吹奏楽のコンサートを観に行ったりしています。1年目の社員が浅草のサンバカーニバルに出演する時には、みんなで応援に行くなど、プライベートでも仲良く過ごしています。
社友会という制度があり、毎月積み立てを行いながら社員が企画して様々な活動を楽しんでいます。内容は日帰りのイベントやバーベキュー、旅行など自由で、アンケートを取ると旅行を希望する人が多く、積極的に参加したい社員が多いようです。これまでには、那須や伊豆、草津、長野、箱根、さらには北海道・札幌の雪祭りなどを企画・実行してきました。近郊の名所はほとんど訪れており、会社が費用の半分を負担しているため、気軽に参加できるのも魅力です。
「社長は若い社員の輪に入ることをためらわず、率先して交流してくださいます。普段はなかなか話す機会が少ないため、こうした場を通じて距離を縮めたいという思いが込められています。(岡本氏談)」

貴社の強みについて

当社は金融系の案件が多いですが、意図的ではなく、私自身、もともと大手金融機関様にお世話になっていたこともあり、金融機関様とのつながりが深く、そのご縁から現在の主要顧客は農協系の金融機関様の案件が多くなっています(銀行業務、保険業務、流通業務)。
その他にも、信金各社様をはじめとする様々なお客様とお付き合いがありますが、基本的にはBIPROGY社を通じての案件となります。ただ、最近ではエンドユーザ様からの一次請負ビジネスも増えてきています。
このような展開が可能になっている大きな要因は、優秀な人材の採用ができていることです。
ビジネスパートナー様には厳しい要求をせざるを得ない事や、スキルミスマッチがあるとお客様の期待に応えられないことも増えてきています。一度ミスがあると、ユーザ様から厳しく叱責されることもありますし、「単価を下げろ」といった要求が来ることもあります。そうした経験から、「社員を中心に業務を回そう」と決意しました。最初は3~4人の採用から始めましたが、最近では年間で5~10名の採用実績があります。ただし、採用するに当たっては、大学卒以上を条件に新卒者のみの採用を行っています(私立大学、国公立大学、大学院卒)。人材紹介エージェントを通じて採用を進めています。複数のエージェントと成功報酬型の契約を結び、「紹介料を惜しまず、足りなければ銀行から借りる!」という覚悟で取り組んでいます。
理系・文系を問わず、新人研修を3ヶ月行ってきていることもあり、優秀な人材であれば新人でもお客様には受け入れて頂いています。履歴書と人物像をしっかり説明すれば、未経験でも受け入れてもらえる事が多いです。
逆に、経験者の採用は行っていません。

人材育成方法などについて

新人教育研修は、同じ METSA 組合員であるアイ・クリエイティブ社に依頼しています。
研修期間は3カ月で、その後は7月から OJT に移行します。本人の希望を確認したうえで仮配属先を決定します。
なお、受け入れ先のお客様に案件がないと配属はできません。案件があれば、先輩社員の配下で新人も受け入れて頂けることになります。お客様からの要求水準は高く、クレームが発生しないように部長たちも様々な面で苦労していますが、3~4ヶ月で一人前になってきているようです。
また、以下のような教育施策も実施しています:
SEカレッジ
BIPROGY の OB によるコンサルティング教育およびマネジメント教育
社長の指名によるテーマ別研修 などです。
資格取得に関しては、残業代の支給は行っていませんが、本人の努力に報いるため、受験料および合格時の報奨金は会社負担としています。

これから力を入れることや貴社の方向性はいかがでしょうか

先日、あるセミナーに参加したのですが、「2035年には今の仕事のほとんどがなくなる」という話がありました。5~10年後のことです。当社はインフラ構築と管理運営を主な事業としている会社であり、プログラム開発が中心ではないため、すぐに仕事がなくなることはないと思いますが、それでも今からしっかりと準備しておく必要があると思っています。
特に、製造工程作業(プログラミング、単体テスト)は今後ますます不要になっていくと言われています。生成AIの進化でプログラムが自動生成されるようになるため、そうなった時に何を生業にしていくのかを考えなければなりません。コアビジネスが失われてしまっては困るので、そこをどう乗り越えていくかが重要だと思っています。まさに、ここ数年が会社としての勝負どころだと感じています。
この数年でビジネス基盤を固めることができれば、10年先の姿もおおよそ見えてきますし、十分に対応できるはずです。しかし、何の準備もしていなければ、例えば基盤構築業務は結局ユーザーニーズに合わせてパラメーターを設定するだけの作業になり、この領域も将来的には自動化に置き換えられてしまうでしょう。おそらく10年後には、基盤構築という業務もなくなってしまう可能性が高いと見ています。
一方で設計業務は残ると思います。プログラムの設計は依然として人間の思考が必要であり、ここは引き続き重要な役割を果たすでしょう。ますます“頭の良さ”が求められる時代になっていきます。そうした背景もあり、当社としては「手を動かす人」よりも「頭を働かせる人」を重視しています。
先ほど申し上げたとおり、当社の足元のビジネス自体は順調に進んでいます。しかし、5年先・10年先を見据えると、事業をどのように展開していくべきかが大きな課題になります。生成AI環境そのものを開発するのは、大手企業が何兆円もの投資をして取り組んでいる領域であり、私たちには直接関係のない話です。重要なのは、AIエージェントの開発/プライベートLLMの開発など生成AIをどう活用し、ユーザ様が求める価値をどのように作り出していくかという点です。
当社としては、ユーザ様が使うシステムの設計思想の骨格を作ることが役割になっていくのではないかと考えています。そのために、現在、部長や役員が中心となって検討を進めているところです。必要に応じて現場から数名を抜擢し、リサーチ・研究・開発に専念させることも想定しています。これは完全に投資であり、人を雇うことも含めて、会社としての覚悟が必要になります。
当社は幸いにも、インフラ基盤、管理系、そしてアプリケーション開発(主に勘定系)まで一通りの領域を扱ってきました。その経験を活かし、AI が生成した成果物を“標準化”することを新たな事業領域にしていきたいと考えています。
もちろん、簡単にできることではありません。言葉にすれば単純ですが、事業を続けながら並行して進めなければならず、ベンチャー企業のように失敗したら即解散というわけにはいきません。それでも、未来に向けた重要な取り組みとして進めていく必要があります。

組合への期待やご要望ご意見があれば

METSAに対して、あまり期待できるところがないと感じています。 現状では、どこに期待を置けばよいのかが正直よく分からないです。もちろん期待していないわけではなく、期待したいとは思っているのですが、具体的に何が期待できるのかが見えづらくなっています。
例えば、私が先ほど話したように、これからの技術動向に関する情報をメッサ側から積極的に発信してくれること、あるいは、最先端の尖った分野に人材を送り出す力のある会社があれば、それを受け入れる器をメッサ側で準備してくれること、そういった役割を期待したいところです。コロナ禍以降、対面機会も減り、ほとんどWeb上でやり取りするだけになってしまいました。弊社としても、メッサに足を運べる機会は限られています。
そういった状況を踏まえると、私はどちらかというとマッチングというよりも、最先端領域に向けたセミナーや勉強会の開催を期待したいと思っています。
私たちとしては、セミナーを受講したり、特定テーマで若手を教育したり、知識を吸収させたいという思いがあります。現在は、有料の外部セミナーを自分たちで探して申し込んでいますが、費用の問題以前に、そもそも適切なセミナーを探す手間が非常に大きいのです。
もしMETSAが、こうした最新技術や業界動向に関するセミナーを企画し提供してくれれば、私たちとしては大変ありがたいと感じています。

今後の課題について

AI が社会に浸透したとき、弊社がどのようにして生き残るのか、そのタイミングで適切なビジネスモデルを構築できるよう、今から明確なイメージを持ち準備しておく必要があります。
顧客への貢献、ひいては、社会への貢献ができていなければ、淘汰されてしまうだけである、そうならないためにも今からしっかり備えるべきだと考えています。
私が在籍している間に、可能な限りキャッチアップしていきたいと思っています。ここで言う「キャッチアップ」は情報収集ではなく、技術そのものを理解し習得することを指しています。
会社をうまく経営するには、「成功体験」が不可欠であり、失敗しか経験したことがない人は、「どうすれば成功できるのか」を知りません。「こうしたら失敗する」という経験は豊富でも、「どうすれば成功するか」という体験が少ないのです。
もし、そうした人が社長になった場合、形の違った失敗を積み重ねる事になります。
私が従前でお話した事柄は、ある意味では私自身が若い頃に経験し、うまくいった方法を、この会社でも実践しているだけとも言えます。会社を一つのプロジェクトと見立てたとき、その中には多くの要素が存在し、そこに若い頃の成功体験が活かされています。いま私は、その考え方や成功体験を次の世代に伝えているところです。

探訪後記

中村代表は、BIPROGY時代に長年にわたり金融関連と流通関連の顧客システムにおいてプロジェクトマネージャーを務めてきました。業界ごとの考え方や価値観の違いを経験し、それらを踏まえて各プロジェクトを成功に導いてきたことが、会社を引き継いだ後の現在に至るまでの大きな礎になっています。
社員と共に、これからの時代の方向性を的確に捉え(感じ取り)、生き抜くための戦略や投資などに考え抜き、そして実践(行動)していく。この価値観は今後も確実に受け継がれていくものだと感じました。

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